倶利迦羅紋紋(くりからもんもん)
娘の結婚式に披露した楽器演奏。
その音合わせで息子たちが来た時のこと。
駐車場のオーナーに空いているところを使わせてくれるよう許可を取っておいた。
車に何か取りに行った長男が、なかなか戻らないので、オトウサンが迎えに行った。
そのオトウサンもなかなか戻らないので、私が見に行くと、
何やら揉めてる・・・
なになに? どうしたん?
近付いてみると、
「ここはオレが借りてる場所や!」
そう言う揉めてる相手は、
袖から出てる青い・・・
あ!、倶利迦羅紋々!!
不自然に上がった眉も入れ墨のようだ。
こりゃいかん!
よし、ここで私は女優になる。
ちょっと厚かましくて、人のいいおばちゃんバージョンで !
「いや〜 ニイチャン、えらい申し訳なかったなぁ。」
しかしオトウサン、許可を取ってるので自分に非はないとまだ言いたそう。
それを制する私。
「悪かったね〜 すぐに退けますわ。」
「いやな、オレも別のところへ泊めようかと思ったんやけど、それもまた迷惑かかると思ってな。
車にワックスかけながら帰ってくるのを待ってたんや。」
「ほんまに? えらいすみません。
もう晩ご飯の時間やのに、待たせてしもうたなぁ。」
「いや、かまへん。まだワックスかけなあかんし。」
長男の車は、庭に詰めたら入るので移動させた。
そして私は帰り際にもう一度、
「早よ帰ってご飯食べてな〜 悪かったね〜」
「いや、かまへん。」
オーナーさんの勘違いでとんだ災難になるところだった。
面白い事件に終わったのでよかったけど。
後で聞いたところ、
倶利迦羅紋々のニイチャンは、私が来てから態度が一変したんだそうだ。
私の演技能力は大したもんや。
「コワカッタ〜」 ってオチも言わなあかんかったね。