魔法の薬
十五年ぐらい前かなぁ。
喉が痛くて、
何日も痛くてたまらなかった。
薬を飲むのは好きではないけれど、あまりに痛いので、
仕事帰りに道沿いの小さい薬局に寄った。
奥から白衣を着た5〜60代の女性の薬剤師さんが出て来た。
「喉が、痛くて痛くて・・」
すると、
「いい薬があるのよ。」
ささやくように言ったその人は、
入り口付近にあった液体の飲み薬を出してくれた。
家に帰って小さいキャップに薬を一杯、
そう、たった一杯飲んだだけで、
速攻、痛みもイガイガも何にもなくなった。
次の日もその次の日も、全く痛くはなく、
たった一回それを飲んだだけですっかり治ってしまった。
よく効いたその薬の瓶のラベルを見たら、
CMでもやっていた「〇〇咳止め」だった。
何年か経って、また喉が痛くなったときに、
それを思い出してドラッグストアで同じのを買ったことがあるが、
一回で治ったなんてことはあれっきりだった。
きっとあの人は魔法使いのおばあさん。
店の奥で「ねるねるねるね」みたいに薬をグルグルかき混ぜてるにちがいない。