ありがとう
父が危篤状態になったとき、
叔父が、巻き寿司やお稲荷さん、ペットボトルのお茶を数本持って来てくれた。
弟が知らせてくれたんやね。
息を引き取ったのが夜の7時前で、一段落したら急にお腹が空いてきて、
叔父が持ってきてくれたお寿司とお茶がどんなにありがたかったか。
叔父はなんて気が利くんだろう。
誰もがそう思った。
ところが、それはちがっていたのだ。
弟は叔父に知らせたわけではない。
叔父は、家で仕事をしていたら何故か急に、
「今日はどうしても病院へ行かないといけない、どうしても今日じゃないと。」
そう思えてきて、
認知症の妻に、「絶対どこにも行くなよ!」と言い残して、病院へ向かった。
途中、
「そういや手ぶらもなんやし、なんか買って行こう。」
スーパーに寄って、
「付き添いのもんも腹減るやろなぁ。」
何故か大きいお寿司のパックを3つも。
いつもそんなに大勢付き添っているわけではない。
そうして病室を開けたら父はもう昏睡状態だった。
「なんと!なんでこんなことに!!」
叔父自身が自分の行動にいちばん驚いたんだそうだ。
これは絶対に父の仕業やね。